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結ぶことで始まる

1 日前
読了時間: 2分

界石を作るとき、私はまず紐を撚ることから始める。


麻の表皮をきれいに乾燥させた、金色の精麻。

その繊維を捻りながら重ね合わせ、摩擦によって、二本の繊維の束を一本の紐へ撚っていく。


そして、できた紐を石に結ぶ。


繊維を一本の紐にするにも、紐を石に結ぶにも、二つのものを一つにするときには摩擦を使う。


摩擦があることで、一つにかたちをとどめている。


なんだか人間関係にも似ている。


「結ぶ」という日本語には、物理的な動作以上のものが重なっているように感じる。


縁を結ぶ。

関係を結ぶ。


「結ぶ」には、自分から何かを始める響きがある。


自分の意思で手を伸ばし、何かと何かのあいだに新しい関係をつくる。

そこから、それまでにはなかった物語が始まる。


けれど、「結ぶ」と「結ばれる」では、少し様子が変わる。


「結ばれる」となると、自分が選んだわけではないのに、いつの間にか誰かや何かとの関係の中にいる。


自分の作為の外側から、否応なしに物語が始まってしまうような、不思議な響きがある。


そこには、喜びだけではなく、ときにはこれから始まる物語への期待や、不安や恐れも混じっているかもしれない。


そして面白いのは、「結ぶ」が始まりだけではなく、終わりも連想させることだ。


「締めくくる」という言葉がある。


何かを締めくくると、その物語はいったん終わる。

けれど「締めくくる」という行為は、束ね、結ぶことでもある。


結ぶことで始まり、

結ぶことで終わる。


始まりと終わりは、反対のことのように見える。


けれど、同じ出来事を違う側から見ているだけなのかもしれない。


何かが始まるとき、そこでは同時に、それまでの何かが終わっている。

何かが終わるとき、そこからすでに、別の何かが始まっている。


始まりと終わりとは、同じことなのかもしれない。


一本の紐になるためには摩擦がいる。

結び目がほどけないためにも摩擦がいる。


摩擦があることで、一つの形をしばらく保っている。


人間関係も、案外そんなものなのかもしれない。


二本の繊維を撚って、一本の紐にする。

その紐を、石に結ぶ。


結ぶことで始まり、結ぶことで終わる。


品部東晟

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